不倫相手に接触禁止の約束をさせるときの注意点について弁護士が解説
作成日
2023/07/20
更新日
2023/07/20
目次
不倫相手が同じ職場という場合には、今後、また不倫するのではないかと心配になりますよね。
不倫が発覚した後、離婚をせずに夫婦関係を修復・再構築する場合には、不倫相手に「接触禁止」の約束をしてもらうことはとても効果的です。
その際の注意点は、次の2つです。
- 書面に残すこと
- 約束を破った時の違約金を決めておくこと
- 不倫相手に接触禁止を約束させるときの注意点
- 接触禁止の具体的な文言
- 違約金の合意
接触禁止の約束について大切なこと
書面に残すこと
約束を破った時の違約金についても決めておくこと
この2点を押さえておけば、配偶者が再び不倫相手と会ったり連絡をとった場合には、不倫相手は基本的には約束した違約金を支払わなくてはいけません。
違約金の約束も有効なんですね!
違約金について約束させることは、「損害賠償額の予定」といって民法420条1項により有効なのです。
とはいっても、後でご説明しますが、約束を破ったら1億円を支払う、といったようなあまりに法外な金額の場合は認められませんが…。
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
不倫相手との接触禁止は、あくまで当事者が合意のうえ「約束」するものであり、裁判所などの公的機関が「命令」するものではないからです。
書面を作成すること
口約束でも約束としては有効です。
しかし、約束の内容を書面で残しておかなければ後で
「そんな約束はしていない」と言い逃れされてしまうかもしれません。
そこで、 証拠として残すためにも、必ず書面を作成するようにしましょう。
書面の題名はどうしたら良いですか?
題名を間違えたら、効果がなくなりますか?
題名はそれほど重要ではありませんので、題名だけで書面の内容の効果がなくなることはありません。
通常は「合意書」や「示談書」などとすることが多いでしょう。
書面は同じ内容のものを2部作成して、
1部を不倫相手に渡し、もう1部は自分で保管します。
書面の最後には、約束の当事者である
自分の氏名・住所、不倫相手の氏名・住所を記載し、それぞれ押印しましょう。
後から「私ではない」と言われないために、
不倫相手の氏名・住所は、住民票記載の氏名・住所であることが望ましいため、住民票や、住民票記載の氏名・住所が登録されていると考えられる運転免許証や(国民)健康保険証等の公的証明書を確認するようにしましょう。
そもそも、不倫相手と何かを約束するという行為に抵抗があります……。
一方的に約束させることはできませんか?
それでしたら、「誓約書」という名目で、配偶者とは接触しないと相手に誓ってもらう方法も考えられます。
「合意書」にする場合も「誓約書」にする場合も、効果は同じです。
接触禁止の具体的な文言
(1)「接触」とは
もう夫と会わないようにするには、具体的に、どんな条項を入れれば良いですか?
今後は「接触」をしないという条項を入れる必要があります。
ですから、もしも今後、仕事などで接触する可能性がなければ、次のような文言で誓約書を書いてもらうと良いでしょう。
『●は▲に対し、この合意書(※題名に合わせます)作成後は、合理的理由なく■と面会しないこと及び電話、メール、FAX、手紙、SNSなどいかなる手段でも■と連絡を取らないことを約束する。』
※●は不倫相手、▲は不倫された者、■は不倫した配偶者(夫)です。
不倫相手と夫の一切の連絡・接触を断ちたいところですが、なかなかそうもいきません。
不倫相手が慰謝料として十分な金額を支払った場合には、相談者の夫に、その一部を自分に支払うよう請求できますから(求償権の行使)、そのために夫に連絡・接触するかもしれません(※不倫相手が求償権の放棄をしている場合を除きます)。
また、万が一、道でばったり出会ってしまうかもしれません。
そのような場合にまで、約束を破った責任を負わせるのは、妥当ではありませんね。
そこで、 「合理的理由」のない連絡・接触を禁止するのです。
(2)仕事上に関して―仕事上は必要最低限の接触のみ認める
そこで、仕事に関わる必要最低限の接触は認めざるを得ません。
そこで、先ほどの条項の「この合意書作成後は、」の後に 『業務上やむを得ない場合を除き』などの文言を加えると良いでしょう。
違約金の合意
さらに、接触禁止の約束を破った場合に、 不倫相手に違約金を支払う義務を負わせれば、約束が守られる可能性は高まります。
『●が○項(※接触禁止を約束した条項)違反した場合は、違約金として、▲に対し、1回あたり金○○円を支払う。」
※●は不倫相手、▲は不倫された者、■は不倫した配偶者(夫)です。
ところで、違約金の額はいくらでもよいというわけではありません。
高すぎると、 公序良俗に反するとして、高すぎる部分について無効となる場合があります(民法90条)。
違約金の相場はありますか?
どのくらいの金額が良いのでしょうか。
相場というわけではありませんが、裁判例を考慮すると、数十万~100万円程度の範囲で合意するとよいでしょう。
もちろん、それ以上の金額が絶対に認められないというわけではありませんが、あまりに高額だと相手も支払を拒む可能性が高くなりますから、それだけ揉める可能性が高くなります。
不倫相手が今後も夫と同じ職場にいるのが心配なので、仕事を辞めてもらいたいです。
辞めさせることはできませんか?
お気持ちは分かりますが、仕事を辞める・辞めないは会社との雇用契約の問題ですから、強制的に辞めさせることはできません。
会社に不倫の事実をばらしたら、居づらくなって辞めませんか?
会社に不倫の事実をばらすと、不倫相手の「名誉毀損」になって、逆に不倫相手から慰謝料を請求されたり、刑事罰を受ける可能性もありますから、決して行ってはいけません。
やはり、接触禁止を約束させて、破った場合には違約金を支払うという内容で合意し、今後の不用意な接触を抑制されるのが良いでしょう。
【まとめ】不倫相手に接触禁止の約束をさせる時は、「書面に残すこと」と「約束を破った時の違約金についても約束すること」が大切です
- 不倫相手に今後、配偶者と接触しないことを約束させ、破った時には違約金を支払うとの合意は有効である。
- 接触とは、一般的に、面会、電話、メール、FAX、手紙、SNS等あらゆる手段で連絡をとることを指す。
- 職場が同じで業務上の接触が避けられないようであれば、その旨を合意書に記載する。
- 違約金は数十万~100万円程度が相当。裁判では、1000万円の違約金を支払うとの約束について、150万円を超える分は無効と判断された事例もある。
合意書には、慰謝料や口外禁止の約束を記載することも多いです。
法的に有効な合意・書面を残すためには、ご自身で対応するより、書面の作成や交渉のプロである弁護士に依頼することを検討するとよいでしょう。
アディーレ法律事務所では、不倫の慰謝料請求につき、相談料、着手金をいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。
原則として、この報酬は獲得した賠償金等からのお支払いとなりますので、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要がありません。
また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。
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慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
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